イギリス社会について

 

Brexit

15日、英議会でEUと合意したEU離脱案が否決。EU離脱の期限は3月末。イギリスとEUとの間で条件を定めずに離脱する「合意なき離脱」となるかもしれない。

 

★なぜEU離脱しようとしているのか。

 EUの基本理念である移動の自由によってヒト、モノ、カネ、サービスが自由に行き交うようになった。これは域内の戦争をなくそうというのが原点でえあったが、イギリスは島国であり大陸側の欧州諸国との統合に対する反対意見は大きかった。それでもEUの一員として東欧などから移民を受け入れてきたが、金融危機や経済の低迷などで雇用状態が悪化すると『移民に仕事が奪われる』『テロリストの流入につながる』などと移民への不満が強まった。また、EUの官僚的な体質や細かな規則、イギリスが負担する出額の大きさなどを問題視する声もあり、国民投票を実施した結果離脱(52%)が決定した。

 

★合意なき離脱とは

 本来EUには19年3月末に離脱しなければならないが、企業や行政機関などの活動に支障が出ないよう、20年末を移行期間と定め、それまでは現状の規則や法制が適用され続けることで合意したが、この移行期間が適用されるには離脱条件に合意し、英国議会と欧州議会で承認されなければならない。これが否決されたということは移行期間がなくなり、様々な法制や規制が整備されないまま離脱することになってしまう。

 それまで自由に行き来していたものに関税の負担や通関業務が発生することになる。そしてこれによって双方に不利益が発生することになり、大きな混乱が予想される。

 

★ではなぜ否決したのか。

 最大の問題は北アイルランド問題である。北アイルランドは北部や英国領の北アイルランド、南部がアイルランドという独立国でEUに加盟している。イギリスがEUから離脱されれば、北アイルランドEUから離脱することになる。北アイルランドを巡っては独立に反対しる勢力と酸性する勢力が紛争を繰り返している。北アイルランドアイルランドとの間に通関などの物理的な国境が生じれば再び情勢が不安定になることが予想される。よってメイ政権は20年末の移行期間までに解決策が見つからなければイギリス本土を実質的にEUに部分残留させる措置を盛り込んだ。そうすればアイルランドでの国境管理の必要性がなくなるからだ。しかし、EUに批判的な勢力から永遠にEU支配下に残るとの批判を受け否決されてしまった。